森林、草地、池が一つの公園にあると、それぞれで光、水分、植生などの条件が異なります。
そこには複数の生きものが暮らし、同じ種類の中にも個体や地域による違いがあります。
こうした環境や生きもののさまざまな違いをまとめて表す言葉が生物多様性です。
生きものの種類の多さは、その一部にすぎません。
三つの水準で捉える
生物多様性条約は、生物多様性を生態系、種、遺伝子という三つの水準を含む概念として定義しています。
- 生態系の多様性:森林、草地、河川、池、干潟など、異なる環境と、そこで成り立つ生きもの同士の関係。
- 種の多様性:植物、昆虫、鳥、菌類など、さまざまな種類の生きものが存在すること。
- 遺伝子の多様性:同じ種の個体や集団の間にも、遺伝的な違いがあること。
花の色や大きさなど、外見から気付ける違いもあります。
ただし、遺伝的な違いのすべてが外見に表れるわけではなく、見た目だけで遺伝子の多様性を判断することはできません。
三つの水準はつながっている
生態系、種、遺伝子は、別々に並ぶだけの要素ではありません。
森の一部が開ければ、日当たりや地面の湿り方が変わり、その場所を利用する生きものの組み合わせも変わる可能性があります。
池と草地の間に湿った岸辺があれば、水中、湿地、乾いた陸地を利用する生きものが近い範囲に見られる場合があります。
身近な自然を見るときは、見つけた種の名前だけでなく、その種が利用している環境にも目を向けると、三つの水準のつながりを捉えやすくなります。
種数だけでは状態を判断できない
観察できる生きものは、季節、時刻、天候、観察範囲によって変わります。
同じ池でも、春と夏では花、昆虫、鳥、水辺の植生の見え方が異なります。
一度の訪問で記録した種数が少なくても、その場所の生物多様性が低いとは限りません。
反対に、多くの種を見つけただけで、その場所が良好な状態だと判断することもできません。
種数だけでなく、どのような環境があるか、環境同士がつながっているか、人の利用や管理がどう影響しているかにも目を向けます。
以前の記録があれば、同じ時期、同じ範囲、近い方法で比べることも役立ちます。
身近な場所で見るポイント
公園、河川敷、田畑の周辺などでも、生物多様性を見る手がかりがあります。
- 森林、草地、水辺、裸地など、性質の異なる環境を探します。
- 日なたと日陰、乾いた場所と湿った場所など、条件が移り変わる部分を見ます。
- 花、実、落ち葉、水量など、季節や天候で変わるものを記録します。
- 草刈り、水路、遊歩道、農地利用など、人による管理の様子も記録します。
異なる環境が移り変わる部分については、「エコトーンとは何か」で詳しく読めます。
生きものを見つけられない時間も、環境を記録する機会になります。
水の有無、地面の状態、植生の高さ、周囲とのつながりを残しておくと、別の時期に同じ場所を見たときに変化を比べられます。
観察メモに残すこと
日付、時刻、天候、歩いた範囲、日当たり、水分、植生、見つけた生きもの、管理の様子。
観察は、立ち入りが認められた道や観察場所から行います。
生きものを採集したり、別の場所へ移したりせず、希少な生きものの詳しい位置情報も公開しません。
保全と持続可能な利用
生物多様性条約は、生物多様性の保全に加え、その構成要素を持続可能な形で利用することも目的に含めています。
2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組は、2030年に向けた世界目標を示しました。
日本では、生物多様性国家戦略2023-2030が、保全と持続可能な利用に関する国の方針を示しています。
これらは国際社会や国の政策を示す資料であり、個別の公園や水辺の状態を直接判定するものではありません。
身近な場所で保全や管理を考えるときは、地域の資料、継続的な記録、現地を調べている人の知見を組み合わせます。
個別の場所を判断するとき
一つの記事や一度の観察だけでは、特定の場所の生物多様性や、必要な管理方法を判断できません。
生きものを増やすことだけを目的に環境を改変すると、もともとあった環境や生きものへ影響する可能性があります。
保全、草刈り、水路の変更、植栽などを検討するときは、土地の管理者や、地域を調査している専門家に相談してください。